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秘境・剣大滝⑥

剣大滝での滞在時間は30分くらいだろうか、滝つぼを含むこの空間は水の覆われて、
水音が岸壁に跳ね返り充満している、たとえて言うならば台風の中にいるようだ。
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水にぬれ風にさらされて体温も下がってきているので、ここでの休憩はあきらめた、
下りは登りよりも苦労した高低差が逆視線で大きく見える、ザイルの撤去なども加わり
核心部を抜けたときは一気に疲れが出てきた、荷物のデポした岩まで思い思いに岩と
水を楽しみ、ずぶぬれになつた体を乾かしながら戻る、1日まち天候の回復を待った
甲斐があった、昼寝にちょうど良い岩を見つけていたのでそこで甲羅干しと昼食、
もちろん乾杯用のビールは谷の水でキンキンに冷やしておいた。
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食後は誰も来ないことを逆手に取り、あられもない格好で大岩(昼寝岩)惰眠をむさ

ぼった、装備を山用に交換し降下地点へ戻り、250mほどの崖をフリーで尾根まで登り

なおす、下りよりも登りのほうが疲れる以外は簡単で、残置ザイルは使わずに登りき

れた。十字峡に戻り夕食の準備をしながら自分の手を見る、手の表面の傷は古い皮膚

はいらないというような状態、夜こっそりとはさみで切り取る、おでこはいまだに3

連こぶがあり痛むが池のタイガーバームが利いた、次回からは自分の救急キットにも

入れておこう、最後の夕食?は重量の軽量化ということで赤飯と野菜炒めで締めだ。
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明日は一気に下山だ夕食後は盛大な焚火で成功を祝った。

秘境・剣大滝⑤

剣大滝の音はすぐ近くで響いている、両岸が切り立ちその間に大岩が挟まれたような場所、
ルートを探しよく見ると右側に残置ハーケンを見つけた、途中までフリーで登りハーケン
の強度を確認してテープを通す、次のハーケンまでずり上がりまたカラビナを通すこれを
繰り返すこと6回、上部へのルートが確保できたので2人をアドバイスしながら登るよう
に言う、ザイルがあればこの壁も怖いものなしで登ることができた。
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10:25最後のゴルジュ帯を腰までつかりながら渡りきるとそこが剣大滝の落ち口だった、
剣大滝最下部のI滝 落差38M。最後の難関を登りきると滝の轟音が待っている、流れの
はやいゴルジュ帯は腰上までつかる羽目になる、でもそんなことはお構いなしで上部からの
落石が続く滝壷、まず手前まで行って滝を真近に見上げる、水流が滝壷に吸い込まれ渦を
巻いている、砕け散った水滴が滝を落下する水の風圧に押されて渦巻いている、滝壷全体が
台風の中にいるような感じとなる、先ほどまでの高揚は即座にかき消されて体温が奪われる、
思い思いに写真撮影や付近を歩き回りながら、剣大滝の存在感を体験することができた.
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体はびしょびしょで気持ち悪くここで昼食する気にはなれない、思いっきり存在感を瞼と
フイルムに焼き付けた。思えば5年前に剣沢を下り二股にて、この下流に幻の剣大滝がある
見てみたいね~といった一言が、2回の現地調査を乗り越えて遂に完結した。この上部には
多くの滝が隠されているがそちらを見ることはないであろう、エキスパートのみに許される
領域であり、我々のレベルをはるかに超えている領域だからだ、剣大滝を後にする前に右の
岸壁にザイルがあるのを認めた、どこかの猛者が上部を狙っているようだ。

秘境・剣大滝④

1990.9.5

朝4:00起床今の時点で星も見えていることから今日は大丈夫そうだ、ラジオでは移動

性高気圧のおかげで2日は大丈夫と言っている、朝食を済ませて出発に準備に取り掛か

る、ザイルや補助ロープなどの登搬道具と沢登りの道具が追加されたザック、担ぐと昨

日の打ち身で体中の関節が悲鳴を上げている、それでもつけていないのと同じくらいに

軽く感じる。遭難碑前で合掌市して今日の安全を祈る、まず下降点でザイルの安全確認

しっかりしていて大丈夫そうではあるが相当古いものだ。最初の1~2ピッチは樹林帯

の草付きなので付近の木をつかみ下れる、3ピッチ目からは木もまばらになるがここの

ザイルは新しい、しかし安全を確認しながらザイル無しで下ることができる、4ピッチ

目は掴む木はないが草付きの岩場となり適度なホールドがある、ここで最後の5ピッチ

目は残置ザイルと自前のザイルのダブルで下る、一部で簡単な懸垂下降が必要になるが

それも10mほどで難なく通過、あとからくる2人に下からアドバイスを伝えながら先に

河床に降り立ったと同時に上部から落石が、慌てて退いたので被害なかったが発生元は

池で井の手をかすったらしい、なにわともあれ3人とも無事河床に到着した。
    👇尾根から河床への降下(残地ザイルはガイドが設置したものか?)
     
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    👇降下地点より上流を望む
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  👇剣大滝の上部が見えた
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ここから見上げる下降点は登るのがちょっと怖いような急登だ、水にぬれないで川岸を
遡行する、立ち止まると遥か彼方の岸壁に一条の水しぶきが見える、それが剣大滝の
落ち口だった。水に濡れないように岩を飛び越えたりしながら上流に進む、大きな一枚岩
のところでこれ以上進行はできなくなった、ここで遡行のに適した渓流靴やわらじに交換
して遡行開始。
  👇大きな荷物はデポ、足回りを固めて渡河の開始
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    👇中央の白い点が剣大滝最下部 Ⅰ滝 落ち口
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初めての道具ではあるが岩にコケや藻が付いていないのと、花崗岩などが主体なので
すこぶる食いつきがよくどんどん進む、渓谷が狭まり小さな滝が出てき始めると腰まで
の渡河も始まる、右に左にルートを求めるが水につかることを億しなければ問題なし、
30分も遡行して体も冷えてきたので草付きの大地で休憩、ここは天場などに使われる
らしく焚火の跡や横の大岩には登搬用具のデポもあった。
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   谷が急激に狭まるところから本格的な遡行が始まる、腰まで流れにつかり対岸に渡るが

足場がなく仕方なく流れを浴びながら岩の間を抜ける、岩場をへつりブリッジをくぐる

と最後の関門が現れた。

秘境・剣大滝③

1990.9.4

朝方からテントをたたく雨の音が大きくなってきた、外は依然雨が強く降り今日は停滞

(沈)に」決定する、再度シユラフに潜り込む、体の節々が痛く少し熱もあるようだ

傷口の洗浄と処置を行う、今日は動かないと決めたら眠りにつく前に食事だ、昨晩の食

事場所に最適ということで「レストラン十字峡」と命名、荷物をもって移動して食事に

移る、途中5名の登山者と遭遇、午前中は十字峡付近で時間つぶし。
    👇黒部川本流と剣沢・棒小屋沢が集まる十字峡
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午後から先日見つけた踏み跡探索、尾根筋を登ると小さな遭難慰霊碑がある、手を合わせ
て上流を望むと見覚えのある岩壁が見えた、途中に2本の固定ザイルを認めた河原までの
標高はおおよそ250Mその付近を中心に探る、もう少し上部まで尾根筋を探索するが踏み
跡もない状況、残置のザイルが怪しいので先を探ってみる、ザイルは樹林帯から草付き
の岩場までの200mをカバーしている、途中で連結はせずに50mで次の固定ザイルに変わ
っている、岩場には新しいザイルが1本渡されている、最後の河原までの区間までザイル
が届いているうえに、意識的にザイルを手繰り寄せて保管した形跡がある、確認したら
ほぼ岩場の上部までザイル無しでも下降が可能、最後の30mは自前の11mmザイルで
河床に降り立つことができる、補助的に残置ザイルは使用可能で破損していない。
   👇剣沢に沿った尾根からの下降地点を探索(十字峡からは遡行できない為)
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      👇剣沢が見える
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また奥にもう1か所にロープが設置されている、ガイドの方が使用していると思われる、
結論として河床への降下は可能となった、これを確認して今日の探査は終了、天候も回復
してきたので明日決行を決める。ベースキャンプに戻り明日の準備と景気づけの宴会へ、
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十字峡の遭難碑前に流木が多数あったので、これをで薪の心配はなくなった。

秘境・剣大滝②

雪崩によつてで来た岩だらけに道でバランスを崩す、右足が滑る左足で踏ん張れない、
荷物が重くバランスを回復させようとするが力不足、体が荷物と一緒に2回転する、
手前の岩で思いっきりおでこをぶつけるとともに右手が岩をつかめず空を切る、左手が
岩をつかんだが遠心力のついた荷物にひかれてまた回る、最後に岩の間に左足が挟まり

靴の幅で岩に挟まる、突然の停止で頭が岩にぶつかり脳震盪を起こす、右手が何か固い

ものをつかんで止まった、友人が駆けつけてザックのバンドを外す、荷物から解放され

た左手が自由になり岩をつかむあと1m転落していたら白竜の滝に飲まれていた。

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5分ほど立ち上がれないでいた友人が駆け寄り何か言っているが分からない、目の

前が赤く染まる出血しているようだ。人は死に直前に自分の一生を垣間見るというそん

な時間はなかった・・・・ゆっくり岩の間から体を外す、両足と右手は大丈夫だが左手

の掌が5㎝の傷皮がざっくりはがれている、頭には3個のこぶがあり一つが出血してい

たが圧迫止血で止まる。怪我もさることながら転落のショツクが大きく再起動まで30分

を要した、それでも何とか生きていた、持ち前の頑丈な体と贅肉がクッシヨンになった
ようだ。応急処置を行い何とか動ける状態になる、友人のタイガーバームと私の救急薬品
が重宝した、後日友人に聞いた話だがその時私の転落風景は風船が転がるようだったとか、
嫁さんになんと話そうかと思案したとか、怪我より事後のことを考えていたようである。


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この時点で中止しようと井から提案されたが、わたくしは強く否定し怪我は軽いので事

後に問題なしと言い張った、本当はもう帰りたい気分が強かったが変えるのも怖かった、
立ち直り後は両足が震え頭がふらつく、それでも40㎏のザックの重みで気持ちが落ち着く、

白竜峡の核心部分を超えると渓相は一気に好転する、道も広くなるとともにほぼ水平ラ

インになる樹木が多くなってきた16:40十字峡に到着,一気に疲れと打撲部分が痛み出す。

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天場の整備と自分の調整・整備を行う、雨が降り出したので500mほど離れた水場のある
テラスに移動、今晩の夕食は恥ずかしながら重量物から処分ということでサーロインス
テーキ、本来は幻の滝が成功した暁に食べるのが正当ではあるが、冷凍処理とはいえさす
がに腐らせるより明日のエネルギーに変わっていただく、何処からかワインも飛び出した、
食べ物が入るということは万事問題なしということか、夜は池の4人用テントに全員が休み、
私のツエルトは荷物置き場に変わった、アルコールで神経をマヒさせて就寝、明日の天気予
報は「雨」天候次第だがどうなることやら。

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